インタビュー特集 ~自分らしく暮らす~ Good Life for Person with Dementia 認知症の人が住みなれた地域で自分らしく暮らすことができる社会へ

第1回認知症の捉え方、受け入れ方

『認知症は何もわからなくなってしまう病気』と思われていた時代から、現在は大きく変化しつつあります。ちょっとした工夫や考え方を変えることで、毎日をいきいきと過ごすこともできるのです。今回は、看護師として長年在宅訪問診療に携わり、現在認知症専門外来で認知症ご本人の心の流れを大切にした看護を実践されている本多智子さんに、お話を伺いました。

自分から踏み出してみよう、そして話そう それが認知症と向きあう、はじめの一歩

トピック1 ご本人とご家族へ 認知症は特別な病気ではなく、一般的な病気の1つに過ぎない

誰にでも起こりうる、一般的な病気

長年、在宅訪問診療の現場で看護師として働いてきて、認知症のご本人やそのご家族とのさまざまな出会いがありました。その多くの方が糖尿病や高血圧、呼吸器疾患や心臓病などさまざまな病気を併せ持っておられます。長い間生きていれば誰だって、病気にかかる可能性が増してきます。認知症もその一つ。特別ではない、誰にでも起こりうる一般的な病気にすぎないと思います。

ふと、バランスを崩し、不安になる感覚

認知症になったからといって、ご本人は何もわからなくなってしまうわけではありません。以前と同じように時間が流れる中、ふと自分の中でバランスを崩すときがあり、不安に襲われてしまう、そんな感覚なのではないでしょうか。もしかしたら、「なんか変だ」「いつもの自分らしくない」というモヤモヤを抱えながら、その気持ちをどう伝えればいいか分からず、悩むこともあるかもしれません。

トピック2 ご本人へ 病気を受け入れ、前向きに暮らしていこう

病気を受け入れるには、時間が必要

認知症になってもいきいきと生活している方には、ご自分の病気をしっかり受け止めている方が多いように感じます。でも、病気を受け入れられるタイミングは人それぞれ。認知症だとはっきりしたことで、「どこかおかしい」という不安感が、霧が晴れるようにスーッと消えていったという方もいれば、「この先、自分は、家族は、仕事はどうなってしまうのか」と目の前が真っ暗になり、長い間ふさぎ込んでしまう方もいるかもしれません。

前を向いて、一歩踏み出すきっかけに

一人で悩むことに疲れたら、顔を上げて、周りに目を向けてみてください。悩みを共有できる場所が、案外近くにありませんか? 例えば、認知症の当事者でつくるWEBサイト「3つの会@web」。インターネットを通じて、認知症のご本人たちがさまざまなメッセージを発信しています。同じ病気の人同士、気がねなく会話を楽しむことが、前を向いて一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。


※WEBサイト「3つの会@web」
詳しくはhttp://www.3tsu.jp/をご覧ください。

自分に合う、暮らしの工夫を見つけよう

クリスティーン・ブライデンさんは、認知症と診断されたのちに彼女が経験したことなどを、彼女自身の言葉で伝えるため、講演、執筆活動を行なっています。これまでは、認知症の人自らが、自身の経験を伝えることはあまりありませんでしたが、現在では認知症について情報を発信しているご本人も数多くおられます。
携帯電話のアラームを活用する、その日の予定をホワイトボードに書いておく、といった生活の工夫を、ブログなどで紹介している方もおられます。
そのような情報の中から、ご自分の生活スタイルや価値観にあったものを参考にされてみるのもいいと思います。

うまく伝えられないときは、書いてみるのもいい

ご自分の気持ちをうまく話せないときは、書いてみるのも一つの方法です。実家に立ち寄ったある日、「頭がおかしくなった」「わからない」と書かれた認知症の母のメモを見つけました。おそらく母は自分の切羽詰った気持ちを、書くことで整理したかったのかもしれません。そして、そのメモを捨てずにとっておいたのは、自分の不安感を誰かに伝えたかったからではないかと思うのです。
深く悩んでしまうこともあるかもしれませんが、「うれしい」「悲しい」「疲れた」「笑った」と、感じたままを走り書きにするだけでも、気持ちの整理や何かしらのメッセージは伝えられると思います。

トピック3 ご家族へ 表面的なことだけではなく、ご本人の「思い」を感じる

まずはきちんと、向き合うことから

以前は、私も認知症のご本人から直接お話を伺うことは出来ないと思い込んでいました。ですがあるとき、講演にお招きした講師の方から印象的な言葉をいただいたのです。「そうではない。あなた方が勝手に口を閉ざしている」と。それから私は、ご本人の反応や言葉の端々に、これまでの生活史や人生観、価値観が表れていることに気づき、自然とご本人の人となりに興味が湧いてきました。

「思い」を「自分ごと」として受け止める

思うようにやりたいことが出来なくなったストレスや不安感から、ときには認知症のご本人から過剰な反応や激しい言葉が出てしまうこともあるかもしれません。
そんなときに大切なのは、五感を研ぎ澄ませて、その裏にある「思い」を感じること。そして、その「思い」を、「他人ごと」ではなく「自分ごと」として受け止めることです。ご本人の本当の思いが見えれば、楽しい会話をしたり、ホッとする時間を共有できるのではないでしょうか。

本多 智子さん東京都三鷹市・のぞみメモリークリニック 看護師

名古屋鉄道病院高等看護学園卒。大和病院、東芝林間病院を経て、2001年より医療法人社団こだま会「こだまクリニック」にて在宅訪問診療に従事。担当医師に付き添い、看護業務および診療支援業務を行う。2015年から東京都三鷹市の「のぞみメモリークリニック」に勤務、これまでの経験を生かして認知症のご本人とご家族の生活を支える。正看護師、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、在宅認知症ケア連絡会事務局世話人。

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