インタビュー特集 ~自分らしく暮らす~ Good Life for Person with Dementia 認知症の人が住みなれた地域で自分らしく暮らすことができる社会へ

第2回認知症 ご本人・ご家族のかかわり

認知症になったからといって、何もかもあきらめなくてはと思っていませんか。病気が進むにつれて不便さを感じる場面もあるでしょうが、できることもたくさんあると思います。今回は、看護師として長年在宅訪問診療に携わり、現在認知症専門外来に勤務している本多智子さんに、認知症になっても毎日をいきいきと過ごすためのヒントをお聞きしました。

変化をありのまま受け入れて、見つめなおそう そこには、たった一つの「特別な関係」があります

トピック1 ご本人へ ご家族と共に、新たな一歩を踏み出しましょう

身近な人が離れていくかもしれない不安

認知症になると、今まで簡単にできていたことが難しくなり、日常生活に不便を感じることも出てくると思います。手伝ってもらいたいと思っても、遠慮や恥ずかしさから、なかなか言い出せない、もしかしたら、「できない」と打ち明けることで、家族や友人など身近な人たちが自分から離れてしまうかもしれない、そんな怖さを感じている方も多いのではないでしょうか。

時間がかかるのは、ご家族も同じです

勇気を出して自分の不安を口にしても、ご家族からは「何言っているの」「そんなことないよ」と、あなたを否定するような言葉が出てくるかもしれませんね。でもそれは、ご家族自身も、自分の妻が、夫が、親が、認知症であることを信じたくないだけなのです。
病気を受け入れるまでに時間がかかるのは、ご家族だって同じこと。あわてなくても大丈夫。ゆっくりと、あきらめずに進んでいけば、いずれはトビラが開くはず。これまでも、そのように乗り越え、ご家族と共に新たな一歩を踏み出した方々にお会いしてきました。

身近な人に話せないときは、別のトビラを開けてみよう

ご家族や親しい友人など、身近な存在だからこそ自分の状況を話しにくいと感じている方も多いと思います。だからと言って不安な思いを一人で抱え込んでいるのは、とてもつらいこと。
そんなときは別のトビラを開いてみては? 外に出かけていけば、そこには人の輪があります。同じ立場の人とのつながりができ、互いを認め合ったり、人の役に立てる喜びを感じたりすることもあるでしょう。今は、「3つの会」をはじめとするグループなど、認知症のご本人たちが集って情報交換したり、一緒に活動したり、仲間を作れる場が増えてきています。
とりつくろったりしなくていいのです。あなたがそのまま、そこにいること自体が、あなたの役割なのですから。今のままのあなたを受け入れ、力になってくれる人がきっと見つかりますよ。


※WEBサイト「3つの会@web」
詳しくはhttp://www.3tsu.jp/をご覧ください。

トピック2 ご家族へ ご本人とご家族、それぞれが人生の主体者として「共に生きる」ことが大切です

一方的なケアでは、お互いに疲れてしまいます

ご家族からすれば、「認知症になって不自由が多いのではないか」「何かしてあげなければ」という思いがあるかもしれません。だからといって、ご本人を「お世話の対象」ととらえ、かゆいところに手が届くほどの「上げ膳据え膳ケア」を目指す、そうなるとお世話をする方にもされる方にも限界があり、疲れてしまいます。お互いがそれぞれの人生の主体者となって、「共に生きる」ことが大切なのだと思います。

価値観を押し付けず、相手の視点を大切に

以前、私は訪問診療に伺った先で、掃除のお手伝いなどをすることがありました。それが認知症の方の生活を支えることだと思っていたからです。しかし、どうもしっくりきません。なぜだろうと考えて気が付きました。しっくりこなかったのは「きれいになれば気持ちがいいはず」という私自身の思い込みを一方的に押し付けていたからなのです。価値観はひとそれぞれ。中には多少汚れているほうが安心できる方もいるでしょう。そのことに気付いてからは、相手の視点に立ち「この方にとって心地よいかどうか」を考えながら、認知症のご本人と向き合うようになりました。

一緒に毎日を過ごすことができれば、それでいい

私自身も、遠方に住む認知症の実母と義父母の3人のところに月数回訪れて生活を共にしています。その中で感じるのは、認知症という病気は生活のすべてを奪うわけではないということです。もの忘れが激しい母ですが、何気ない会話を楽しんだり、ときには母親として私を諭す言葉をかけてくれることもあります。同じ時間の流れの中で、笑ったり泣いたりしながら、一緒に毎日を過ごすことができれば、それで十分幸せなのかもしれません。

トピック3 ご本人とご家族へ 夫婦、親子、嫁姑はどの関係も同じではなくそれぞれがたった一つの「特別な関係」です

ありのままを受け入れながら築かれる「特別な関係」

認知症による変化が、今までの家族関係をリセットする良いきっかけになることもあります。そのときに大切なのは、「夫婦」「親子」「嫁姑」はこうあらねば、という固定概念に縛られないこと。人と人との関係は千差万別。似た例はあっても決して同じではありません。お互いがありのままの姿を受け入れながら築かれる関係は、世界でたった一つしかない「特別」なものです。

お互いを精いっぱい思う気持ちを、大切に

自らの認知症体験を伝える講演や執筆活動をされているクリスティーン・ブライデンさんは、認知症と共に生きることを「認知症とダンスする」と表現しています。人間、誰しも年を老うごとに変化するものです。病気であっても人生のすべてをあきらめることはありません。踊るようにしなやかな心で変化を受け入れ、お互いを精いっぱい思う気持ちを大切に、良い関係を築いていければいいですね。

本多 智子さん東京都三鷹市・のぞみメモリークリニック 看護師

名古屋鉄道病院高等看護学園卒。大和病院、東芝林間病院を経て、2001年より医療法人社団こだま会「こだまクリニック」にて在宅訪問診療に従事。担当医師に付き添い、看護業務および診療支援業務を行う。2015年から東京都三鷹市の「のぞみメモリークリニック」に勤務、これまでの経験を生かして認知症のご本人とご家族の生活を支える。正看護師、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、在宅認知症ケア連絡会事務局世話人。

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