インタビュー特集 ~自分らしく暮らす~ Good Life for Person with Dementia 認知症の人が住みなれた地域で自分らしく暮らすことができる社会へ

第3回 認知症の治療と、その意義について

認知症は早い段階で適切な治療を受けることで、完治は目指せないまでも進行が緩やかになります。認知症のご本人とご家族が、住み慣れた場所で、できるだけ長く、穏やかに暮らしていくために、治療にどう取り組んでいけばいいのか、日本医科大学武蔵小杉病院認知症センター 特任教授の北村 伸先生に、お話を伺いました。

本人らしく穏やかに、住みなれた地域でできるだけ長く暮らしていくために認知症治療があります

トピック1 ご本人へ 認知症治療の意義は、今ある能力を維持して、現在の生活を長く続けることです

適切な治療で病気の進行をゆるやかに

認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症は、今のところ治すことはできません。ですが、適切な治療で病気の進行をゆるやかにすることはできます。
実際に、治療を始めた1~2ヵ月後から、やめてしまっていた庭木の手入れを再開した、日記をまた書き始めたなど、充実した生活を送る事が出来ている方が大勢いらっしゃいます。できなくなったことはあっても、適切な治療で今の能力を生かし、毎日を大切に、いきいきと過ごすことができるのです。

できることを続けることが大切です

適切な治療を続けていても、アルツハイマー型認知症は病気の進行を完全に食い止めることはできないため、少しずつできなくなることが増え、生活の中で不自由さを感じる場面も出てくるでしょう。
不自由さを感じるときはありのまま家族に伝えて、ご家族にサポートしてもらいましょう。そして、しっかり治療を継続して、「趣味や自分でできることをなるべく続けてみる」ことがご自宅での生活を長く続けるために大切です。

トピック2 ご本人とご家族へ 認知症について理解を深めることで、より前向きに治療に取り組めるようになります

アルツハイマー型認知症には病気の進行を緩やかにするお薬があります

アルツハイマー型認知症は適切な治療で病気の進行を緩やかにする事が可能です。治療薬には、脳内の神経伝達物質の減少を抑え、情報の伝達をスムーズにするお薬と、記憶の情報伝達を整えて脳内の神経細胞をまもるお薬の2つの系統があります。この2つの系統のお薬は、一緒に併せて使うこともできます。ご本人に合った治療を行うためには、日頃のご家庭での様子をしっかりと医師に伝えることが大切になってきます。診察時に話したいことをメモにしておくなどの工夫をされている方もいます。

薬による治療だけでなく、生活上の工夫や楽しみを取り入れてみましょう

当院では、お薬での治療に加えて、ご本人ができることは自分でやる、今行っていることは今後も続ける、などのアドバイスも行います。たとえば、散歩などの軽い運動をする、いろいろな人と会って話をする、といったことです。大切なのはご本人が楽しく無理なく続けられることです。ご本人がお好きであれば、例えば計算ドリルやTVゲームなどに取り組んでみるのもよいでしょう。

正しい理解で、治療に対してより前向きに

治療を続けていくためには、認知症について正しい知識を得ることが大切です。私は、認知症でも、人によって症状の出方が違うことや、だんだんとできなくなることが出てくることを最初にお話しています。そうすると、ご本人とご家族が見通しを持てるので、病状の変化を冷静に受け止められるようです。
そして、適切な治療を受けることで病気の進行を緩やかにすることができることをお話して、治療により前向きに取り組んでいただけるようにしています。

トピック3 ご家族へ 適切な治療を長く継続することは、安心で豊かな暮らしに繋がります

適切な治療を長く続けることがご本人とご家族を笑顔に

適切な治療を行うことで、進行が遅くなるのと同時に、日常生活に支障となる症状が出にくくなるともいわれています。ご本人が穏やかに生活できれば、本人に笑顔が生まれ、それによってご家族の笑顔にもつながり、豊かな生活へ繋がっていきます。
80代で認知症を発症したあと、治療を続けて10年以上在宅で過ごすことができた方もおられます。ご本人とご家族が住み慣れた場所で、1日でも長く、穏やかな生活を続けることができるためにも治療する意義はあると思います。

治療をきちんと続けるにはご家族のサポートが大切

お薬の治療では、決められた量、治療に有効な量を、きちんと飲み続けることが一番大切です。お薬を飲むことは毎日のことですが、ご本人は飲むことを忘れてしまうかもしれませんし、また、飲み過ぎてしまうのも困ります。お薬をきちんと飲み続けていただくためには、ご家族や周りの方がみて、できるだけ管理していただくサポートが大切なのです。

ご本人もご家族も「一緒に暮らしたい」気持ちは同じ

「何が何でも在宅で」ということではなく、特に一人暮らしの方などは、安全のために施設で生活したほうが幸せなこともあると思います。しかし、認知症の方のほとんどが自宅で暮らすことを望まれます。そして、多くのご家族が、「できるだけ長く一緒に暮らしたい」とおっしゃいます。ご本人もご家族も、住み慣れた場所で、できるだけ長く今までのような生活を続けていきたい、という気持ちは同じ。そのための治療だと思います。

北村 伸先生日本医科大学・武蔵小杉病院認知症センター 特任教授

1976年、日本医科大学医学部卒業。83年モントリオール神経研究所留学。95年日本医科大学第二内科助教授、99年同大学武蔵小杉病院内科勤務。2010年同大学武蔵小杉病院内科教授に就任、2014年より特任教授。日本神経学会代議員、日本老年精神医学会理事、日本老年医学会代議員など役職多数。2007年より、同大学武蔵小杉キャンパス内にある「街ぐるみ認知症相談センター」の代表を務め、認知症の早期発見と、認知症のご本人・ご家族の支援に取り組む。

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