インタビュー特集 ~自分らしく暮らす~ Good Life for Person with Dementia 認知症の人が住みなれた地域で自分らしく暮らすことができる社会へ

第4回 一緒に暮らしていくヒント

「認知症」のご本人とご家族が過ごす毎日を、よりよいものにするには、ご本人はもちろんのこと、ご家族も元気でいることも重要なポイントです。そこで、認知症の方と暮らすご家族を支援する活動に長年携わられている牧野史子さんに、ご本人とご家族が「一緒にいられて幸せ」と感じて暮らしていくためのヒントについて伺いました。

仲間ができると、毎日が楽しくなります 1日1回でも、一緒に笑いあえるといいですね

トピック1 ご本人とご家族へ 頑張りすぎず、自分の心を大切にしましょう

相手の幸せを願いながら、すれ違っていることも

認知症の方と暮らすご家族の方々にお会いしてきましたが、皆さん、大切な人に尽くせることを大きな喜びと感じられています。でも一生懸命になりすぎて、ご自分のことは二の次にしてしまいがち。一方、認知症のご本人も、「してもらっている」という思いから遠慮してしまうことがあります。最も身近な「家族」という関係だからこそ、その思いがすれ違うこともあるでしょう。でもきっと、お互いに、相手が幸せに生きてくれることを、本当は願っているはずです。

客観的な目で、気持ちをコントロール

認知症をきっかけに生活が変わり、ご家庭の中だけで頑張りすぎていると、バランスを崩し、目の前のことだけにのめり込みがちです。ストレスを発散できなければ、いつか爆発してしまいます。そうならないためにも、客観的な目を持ち、自分の心をコントロールする力が必要です。まずは、ご自分が「どう生きたいか」を考えてみることが大切だと思います。

トピック2 ご本人とご家族へ 「話をする」ことが、心に安定をもたらします

認知症に向き合う自分の、心の動きを分かち合う

認知症の方と共に生活されているご家庭では、それまでになかった感情が湧きあがり、家族関係に変化が出てくる場合があります。そして、自分がしっかりしなければと思い、本当の気持ちを心の奥にしまい込み、無理をしていることにさえ気づかなくなってしまう方が多いと感じています。お話を聞いても差しさわりのない私たちのような第三者が伺うと、実は孤独を抱えている方はとても多いのです。認知症の方と暮らしていくには、ご本人もご家族も葛藤や迷いを丁寧に分かち合うことが必要だと考えています。

同じ立場の人の言葉は、心を軽くしてくれる

私たちの活動では、認知症のご本人と一緒にご家族が集える場を提供しています。とくにおすすめしているのが、同じ立場同士の語らいです。同じ立場だと悩みも共通しているので、共感できることがたくさんありますし、何より当事者同士の言葉は、専門家のアドバイスより何倍も心を軽くしてくれるようです。ほかの人の話を聞くことは、自分自身を客観的に見られるようになり、自分の気持ちをコントロールする力を得ることにもつながります。

なかなか話せない人は「書く」こともおすすめ

ご本人やご家族の交流の場があっても、自分のことを話せない方もいます。特に、「人に迷惑をかけない」「泣き言を言わない」と言われて育ってきた方は、なかなか人に頼れない傾向があるようです。
でも、認知症は稀な病気ではありません。ご近所の方など、話せそうな人に、話してみませんか? オープンにして気持ちが楽になった、何かあれば助けてもらえる安心感が得られたなど、「話してよかった」という方は多くいます。
どうしても話せない方は、自分の気持ちを「書く」だけでも違います。その日に起きたことなどの記録を残すことで、後で情報を伝えやすくなるメリットもありますし、書くことは気持ちを発散させることにもつながります。

トピック3 ご本人とご家族へ お互いにとっての、豊かな人生のきっかけに

一緒に参加できる場所に、出かけてみて

ご本人だけ、ご家族だけ、と別々の活動に参加するのは、気が進みにくいという方も多いことでしょう。そこで私たちは、ご本人とご家族に一緒に来ていただいて、それぞれの時間を過ごせる場所を提供するようにしています。近くで過ごすことでそれぞれ安心して楽しむことができ、新しく共感できる仲間ができたりします。皆さんとても元気になっていますし、地域での集まりは地元の口コミ情報も得られて役に立ちます。ぜひ、お近くの、患者や家族の会、認知症カフェ、地域包括支援センターなどに問い合わせてみてください。

家族の絆を深めたり、新しい出会いを楽しんでいる人も

認知症が、豊かな人生のきっかけになることもあります。私が出会った方の中には、以前より仲良しになったご夫婦もいます。若いころのようにデートを楽しむなど、幸せそうな様子はうらやましいくらいです。他にも、新たにできた仲間との交流を楽しんだり、新たな仕事を始めた方もいます。
ご本人も、ご家族も、ぜひご自身の人生を大切に生きていただきたい。そして、1日1回でもいいので、一緒に笑いあい、「一緒にいられて幸せ」と実感できる瞬間を共有できるといいですね。

牧野 史子さんNPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン 理事長

千葉大学教育学部卒。小学校の教員を経て、兵庫県西宮市在住中に阪神淡路大震災に遭う。1995年に「西宮地域たすけあいネットワーク」を設立し、仮設住宅の高齢者の支援活動を行う。2001年に帰京し、「介護する人」=「ケアラー」支援のため「NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン」を設立。日本ケアラー連盟代表理事。

  • インタビュー特集に戻る

こちらもご覧ください。

  • いまの状態みるしるシート
  • 認知症 早期発見のポイント
  • 認知症の治療について 進行を遅らせる治療で本人を支え、家族の介護負担を少しでも和らげましょう。詳しくはこちら
  • 生活の工夫と対応 本人の気持ちに寄り添って、安心・一体感のある、良い関係を保ちましょう。詳しくはこちら

ページトップへ